親族が亡くなると、悲しむ間もなく葬儀が終わり、四九日や一周忌には法要が待っています。
「子どもの頃はただついて行っただけの法事だけれど、大人が出席するときは、何をすればいいのだろう?」
と、悩む人もいることでしょう。今回は大人がわきまえるべき法事でのマナーについてお伝えします。
前日までに、衣服と持ち物を揃えておきます。遅刻しないように、ルートも前日のうちに確認し、早めに休むようにしましょう。
めったに出さない礼服などはカビがついている恐れもあるので、直前に慌てることのないよう前もってチェックしておきましょう。一周忌までは礼服を、三回忌以降は地味な平服でという地域が一般的ですが、何を着るべきかは年長者に聞いておくのがベストです。
服の準備が終わると安心してしまいがちですが、靴を磨いておくのも忘れずに。バッグは葬儀のときにも使用した、黒い布貼りのものを用意します。ただ、三回忌以降はややカジュアルでも許されます。
また、女性のアクセサリーは控えめにしましょう。何もつけないのがベストですが、つけるなら黒パールか白パールの一連ネックレスが基本です。どうしてもピアスやイヤリングをつけないと落ち着かないなら、これもパールのものにしましょう。
香典の表書きは「御仏前」です。水引の色は黒白、地域によっては黄白、黄黒のところもあります。年長の親族に確認しておきましょう。
香典の金額は、1万円から2万円程度が相場です。新札を一度折って使います。表書きの下へ名前を書き、袱紗へ包んで完了です。同じ名字が多いでしょうから、名前はフルネームで書いてください。
忘れ物として一番多いのが、数珠です。何かとバタバタしている葬儀のときと違って、法事で一人だけ持っていないと、とても目立ちます。
なお男性は特に、礼服の裾で手を拭くことがないよう、白いハンカチを忘れないようにしましょう。
遺族宅で法事をする、あるいは遺族宅に一度集まってから法事会場へ貸切バスで行くと仮定して、到着してからのマナーを紹介します。
遺族宅へ到着したら、玄関で靴を揃えます。のちに遺族へ挨拶し、「心ばかりですがお供えください」と香典を差し出します。このとき、「お焼香のときに机へ置いてほしい」と言われたら、いったん収めてお焼香に向かいます。
遺骨や位牌の前で焼香します。宗派や地域によりますが、仏壇ではなく、白い「後飾り壇」と呼ばれるものの上に、遺骨や位牌があることが多いでしょう。間違えて仏壇へ向かってはいけません。挨拶すべきは故人です。
すでにある香典袋の上に、自分の袋を重ねます。一番乗りの場合は、右側に黒いお盆があるはずです。そこへ置きましょう。
法事の会場までは、送迎のための貸切バスを利用するケースが多いものです。遺族宅でバスを待つときには、待ち時間が長ければお手洗いを借り、トイレを済ませておきましょう。できれば借りずに済むとベストですが、会場に着いてから慌てるよりはましです。
バスの車内では、シートベルト着用が義務となっているため、席についたら速やかにつけましょう。子どもが騒ぐようなそぶりを見せたら、「今日は大事な日なんだよ」とたしなめます。もちろん立ち歩きは厳禁です。
会場までの時間や雰囲気によってはカラオケ大会が始まることもあるでしょう。歌うことを勧められたら受けるのがマナーですが、選曲は慎重に。遺族に、故人が好きだった歌をたずねてみましょう。
法事へ向かうときはさすがにないですが、遺族宅へ帰るときには車内で宴会が始まることもあります。一息ついて気が緩むかもしれません。しかしバスの中での飲酒はほどほどにしましょう。少しの酒量でも、気分が悪くなってしまうことが考えられます。
バスで遺族宅へ帰った後、どのようにふるまうべきかをお伝えします。立つ鳥跡を濁さず、スマートで大人な印象を残すには、最後まで気を抜けません。
遺族にとっては、「ここからが戦場」となる場合があります。会場で食事を終えても、やはり遺族宅でくつろいだ酒宴をと望む親族は多いからです。台所仕事や買い出し、子供の面倒をみるなど、積極的に手伝いましょう。年長者の話し相手となるのも、お役目のひとつです。
また、自分自身が遺族の負担にならないよう、頃合いをみていとまを告げるようにします。
一番気をつけなければならないのが、遺族宅への忘れ物です。数珠やハンカチ、袱紗、返礼品については、退出する前に必ず持っているかをチェックしましょう。
それまでがすべて完璧でも、忘れ物をしてしまうと一気に間の抜けた印象を持たれてしまいます。