厚生労働省から2024年4月1日に「バス運転手の改善基準公示」が施行されました。これまで他の業種に比べて、長時間労働が問題となってきたバス運転手の労働環境をより良いものにするために決められたもので、1日にバスを運転してよい時間、拘束時間、休息時間について定められています。
このことにより、これまで運行可能だったスケジュールがNGになるケースが続出。かねてからのバス運転手不足と相まって、「バスは空いていても運行できない」状況が生まれています。
特に拘束時間が長くなりがちな試合送迎やゴルフ送迎などは特に要注意となります。「バス運転手の改善基準公示」のポイントと、具体的にどんなスケジュールがNGになってしまうかを検証してみました。
バス運転手の働き方については、これまでも運転時間・拘束時間・休息時間が決められてきました。2024年4月1日からはそれぞれの時間の上限に加え、年間の上限規制も導入されてより厳しくなっています。
一般的な労働時間は1日8時間までと定められていますが、バス運転手はこれまで1日13時間まで、最大で16時間まで拘束可能とされていました。そのうち、ハンドルを握る時間は9時間までが目安。
「ハンドルを握る時間は2日間で平均9時間まで」という条件はこれまでも、これからも変わりません。また、連続して運転して良い時間は最大で4時間。
1回の休憩で連続して10分以上、合計30分以上の休憩を4時間以内に取る必要があります。原則、2時間以内に1回は休憩をとるのがベストです。
とはいえ、これまでは休日は週に1日以上でOKであったため、他の業種に比べてはるかに長く働いていることは間違いありません。
告示前は「1日13時間まで、最大で16時間まで拘束可能」。告示後は「1日13時間まで、最大で15時間まで拘束可能」に変更されました。
14時間を越える拘束は週3日までです。
ここでいう「拘束時間」は、バスのハンドルを握っている以外の時間。つまり、バスツアーや送迎などで待機している時間や食事・トイレ休憩も含まれます。
また、営業所からお客様を乗せる乗降場所までバスを回送する時間、安全対策のための点呼・整備(2時間)、バスの掃除など、もろもろの仕事もありますので、これらをすべて「拘束時間」としてカウントします。
告示前は「連続して8時間以上」の休息が必要。告示後は「連続して11時間以上(最低でも9時間以上)」に変更されました。
これまで継続8時間以上の休息期間が取れない場合、条件付き(横になって休める仮眠施設を用意)で1回4時間以上の分割休息(2回まで)で合計10時間、1ヶ月の全勤務回数の半分までとされていました。
今後は連続休息は9時間以上で、合計は11時間以上と厳しくなっているため、実質「分割休息」ができる可能性は低くなります。早朝運行で待機時間が長くなりがちなゴルフ送迎などは要注意です。
運転手付きでマイクロバスをレンタルして、日帰り旅行を企画しました。以下のスケジュールで見積りを取る場合、OKなのはどれでしょうか。
この場合、1.3.のスケジュールは問題ありません。2.は利用時間が10時間となるため、1人の運転手では運行NGになる可能性大です。
ルールは「2日間平均して9時間」ですが、前日や翌日も同じ運転手さんが勤務し、それぞれ9時間の運転予定だった場合、2日間平均で9時間30分になってしまいます。
基本的には【出発時間ー到着・終了時間=9時間以内】でスケジュールを考えましょう。
早朝スタートになることが多いゴルフ送迎。特にゴルフコンペの場合、ラウンドを終えた後もパーティや表彰式などを行う場合があるため、長時間になることもしばしばあります。
1ラウンドの平均所要時間は休憩を除いて4時間~5時間。ゴルフ場についてから着替え、練習後、9時スタートして昼休憩を挟み、16時ぐらいに終了というのが多いでしょうか。
以下のスケジュールでOKなのはどれでしょう。
いずれの場合も1名の運転手がハンドルを握る時間は2時間~4時間ですので一見、どれもOKのように見えるかもしれませんが、休憩している時間も拘束時間に含まれます。
1.の場合は11時間、3.の場合は13時間です。これにバス運行前後の安全点検の時間2時間分を加え、バス乗降場所までの回送時間を加えると、いずれの場合も13時間をオーバー。
運行を断られる可能性が高くなります。バス待機中にホテル等で休憩を取ることで、分割休憩OKとみなされるのですが連続11時間以上の休憩がとれていないのでNG(条件付きで9時間以上はOKといわれていますが、原則はNGです)。
しかし、3.の場合は拘束時間が13時間をオーバーしてしまうのでNGとなってしまいます。
2.の場合はバスをいったん返し、夕方お迎えにいくのでこれはOK。ただし、バスは2往復しますのでバス料金はその分、高くなってしまいます。
短距離・短時間であればリーズナブルですが、片道2~3時間かかるとちょっと微妙ですね。
少しややこしいので、見積りをお願いする際、バス会社にどんな方法なら送迎が可能なのかをよく相談してみましょう。
(参照元:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト・バス運転者の労働時間等の改善基準のポイント(厚生労働省)より)